ワルリ族

インド・マハラシュトラ州・ターネ-県に住む少数先住民族「ワルリ族」。
ワルリの一日は太陽の神様をお迎えする準備として顔を洗うことから始まります。
自然の中に神々を見出して、畏れ、尊敬し、感謝しながら生きてきたワルリ族。
彼らは田んぼでお米を作り、川で魚をとって生活をしています。
土壁に藁やヤシの葉で屋根を葺いた家で暮らし、夜は牛や鶏と一緒に眠ります。
心豊かで、自然に助け合うことを知っているとてもやさしいワルリの人々。
でも、そのやさしさの向こうにこんな歴史もありました。

紀元前にアーリア人がインド大陸に渡る前からインド大陸で生活していたと言われる ワルリ族は、他民族の侵入で森の中に追いやられ、以来ひっそりと独自の文化を 守りながら自給自足の生活を続けていました。

しかし、20世紀に入るとワルリは外部からやってきた商人などによって半奴隷のような 生活を強いられます。文字を知らないワルリは土地を騙し取られて小作人となり、 土地の収穫物にかけられる重い税、そしてそれを支払うための借金にかかる法外な利子 によって苦しい生活をしていました。

その状況は、1945年頃から始まったインドの共産党員による「ワルリ族解放運動」を きっかけに徐々に改善されます。これを機にインド各地で少数先住民族の人権問題が 論議されるようになりました。 後にキリスト教会やインド国内のNGOも加わり、 現在までその運動は続いています。

その運動の成果もあって、現在では土地の一部はワルリ族に戻され、半奴隷状態下に おかれているワルリ族はほとんどいなくなりました。
しかし、未だに一年のうち数ヶ月は食料不足に悩まされ、飢えをしのぐために再び 土地を手放してしまうワルリも少なくなありません。

長い間差別を受けてきたワルリ族は自らの文化や伝統にも自信を失ってしまいました。
また、政府による森林伐採や都市からの工場進出に伴う環境破壊などでワルリの 生活圏は壊されつつあります。

このような状態の下で、ワルリ族の文化や伝統も薄れつつありました。
しかし一方、近年ではワルリ族の伝統の中に生きている“知恵” -自然と人間、人間同士が共生していくための知恵―に感銘をうけた人々によって ワルリ文化保護の活動もインド国内外で展開されています。
そして今、ワルリ自身も再び少しずつ自分たちの文化と伝統に誇りを持ち始めています。

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